巾着 -変わらない夏。変われない夏。-

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翔子:「今年も変わらず、お祭りの季節がやってきたね」

高志:「君と過ごす祭りも、今回でちょうど10度目になるのか」

翔子:「お互い年をとったね」

高志:「そうだね、年をとったね」



天高く舞い上がり弾け飛ぶ艶やかな花火たち。

高志は、そんな花火の光に照らされる、翔子の微笑が好きだった。

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高志:「年をとったけど、君は何も変わらない」

翔子:「・・・ふふっ、どうしたの?」

翔子の仄かに赤みを帯びる唇が愛おしい。

できる事なら、今すぐその唇に触れたい。

でも今は、それは限りなく近く、永遠に遠い存在になってしまった。

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高志:「・・・・・・」

翔子:「・・・・・・」


野に咲く花々が暖かい風を受け、ゆったりとその体を揺らす。


高志:「・・・そろそろ、君は変わるべきだと思う」

翔子:「・・・?」


高志:「あれから10年。僕はもう、君の側にいるべきではないと思うんだ」

翔子:「・・・どうして?」


翔子は震える手で小さな巾着を胸に抱き寄せる。

長年使い古した巾着は、翔子の胸元でカサリと擦れた音を漏らす。


高志:「僕が側にいる限り、君は今の場所から進めない。だから・・・」


カサリと零れたその音は、切なさを纏う苦痛に似た音であった。






彼との思い出の品である巾着と共に、毎年、翔子は一人丘の上で花火を見上げる。

毎年巾着が微かに湿るのは、翔子の汗か涙か、それともそれに宿った彼の涙か。






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また今年も変わらない夏が始まり、そして終わる。







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by liner-s | 2007-07-11 19:14 | 手作り・創作/作品紹介