真夏のクロスロード

夏のうだるような暑さのなか出会った彼女は、南国の果実のようにみずみずしい笑顔をする子だった。

燦々と照りただす太陽の下で微笑む彼女は、月夜を知らぬかのように明るく、日の光によりできた影すら恥らう程の強き光を携えていた。

僕の友人はその子の事を当たり前のように好きになり、その想いを曲げることなく全身で伝える日々をおくる事になる。
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彼女はそんな彼の強き想い知り、考え、次第に彼の独特の雰囲気を帯びた魅力に気づくようになるのだった。

夏の恋の物語。




友人と僕は19という年代に関西という土地で出会った。

何事にも率直で、真面目な性格の彼は、女の子に対しても自分のスタイルを崩さず真っ直ぐに向かっていくタイプである。

僕自身はどちらかというと不器用ながらも変化球を投げるタイプなので、正反対のようなスタイルを持つ彼を非常に面白く感じた。


幾度飲み会を共にしたことだろう。


そして幾度、女性という生き物の難しさについて語り合ったことだろう。


それなりに器用に女性と接する僕を、羨ましいと時たまぽろりと零したが、僕自身もまた、真っ直ぐに熱く、木っ端微塵に砕ける程思いっきりぶつかっていける彼の事を羨ましく思っていた。


それから何年かした後、素敵な笑顔を持つ彼女と僕たちは出会う。

眩しいぐらいに無邪気な笑顔を携える彼女の言葉一つ一つは、表面的な彼女の魅力以上に内に秘めた奥深い魅力を感じさせた。

じわりじわりと彼に侵食していく彼女の魅力を傍らで感じていた僕は、そっと二人の行く末を見守る事にしたのだった。





二人は浜辺でキスをした。


その口付けは、友達としてなのか恋人としてなのか分からぬものだったが、彼の心を乱すには十分なものだった。

砂粒のような安心感と夏の嵐のような不安感が入り乱れる中、彼は次第に彼女との距離をおくようになる。

それは彼がはじめてみせる防衛本能だったのかもしれない。

とめどなく打ち寄せる波をせき止める防波堤として、心に壁を置いた彼の気持ちを知ってか、彼女もまた、彼とどのように接して良いか迷っていた。

彼女がはじめて見せる悲しげな表情に、一人の友人として、そして一人の男として、僕は彼女にどのような言葉をかけるべきか迷った。



ただただ時が過ぎ、そして彼は僕たちの前から姿を消した。
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グラスの中で揺れる液体の波は、何度目かの夏を僕たちに知らせていた。

彼が自分たちの近くに存在した日々を思い出し、語らい、懐かしがりながらそっと微笑む。

そしてお互い寂しさを堪えられずに口元を歪ます。


僕と彼女は握手し、別れの言葉を掛け合う。


駅の改札口で、手を振る彼女は、あの時の夏と同じ曇りのない笑顔だった。



翌日海外へ飛び立った彼女は、新たな自分の道を進みだす。

僕もまた、自分の道を進みだす。

そして、彼もまた、僕たちの知らない場所で、自分の道を進んでいることだろう。


長い人生の中では一瞬かもしれなけれど、僕たち三人は同じ時間を共有し、その道をわずかながらも交わらせた。



元気にしているだろうか。



その一言が頭をよぎる時、この先永遠に交わらずとも、あの時確かに存在した時間は消えることなく、心の中を夏の穏やかな雲のように漂い続ける。



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元気にしているだろうか。

僕は、元気だよ。
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by liner-s | 2006-08-14 14:15 | 管理人独走記事